斑猫はんめう)” の例文
斑猫はんめう鴆毒ちんどくは容易に素人の手に入らず、山野の毒草は江戸の町では得難く、中毒死といふと、一番先に考へられるのは、この岩見銀山でした。
が、その斑猫はんめうのやうな色をした、美しい悪の花は、氏の傾倒してゐるポオやボオドレエルと、同じ荘厳な腐敗の香を放ちながら、或一点では彼等のそれと、全くおもむきが違つてゐた。
あの頃の自分の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さうして玉虫と斑猫はんめうと毒茸と……いろいろの草木、昆虫、禽獣から放散する特殊のかをりを凡て驚異の触感を以つて嗅いで廻つた。かゝる場合に私の五官はいかにも新しい喜悦に顫へたであらう。
水郷柳河 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
斑猫はんめうが光りゴム長靴乾く
今日:02 今日 (新字旧仮名) / 西東三鬼(著)
きけば半兵衞も懇篤ねんごろに教へける中にはるはなして一段高き所につぼ三ツならべたり寶澤ゆびさし彼壺は何といふ藥種の入ありやとたづねければ半兵衞のいふやうあれこそ斑猫はんめう砒霜石ひさうせきと云ふ物なるが大毒藥だいどくやくなれば心して斯はとほくに離したりときいきもふとき寶澤はわざと顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
のろひて、斑猫はんめう
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
吹かけられ、危ふく川へ投込まれるところだつたと申しますし、四五日前には、朝の味噌汁の中に、見たこともない恐ろしい蟲が入つて居りました。斑猫はんめうと申すんだ相で
さうして玉蟲と斑猫はんめうと毒茸と、…………いろいろの草木、昆蟲、禽獸から放散する特殊のかをりを凡て驚異の觸感を以て嗅いで囘つた。かかる場合に私の五官はいかに新らしい喜悦に顫へたであらう。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「ところで、あの毒は何んでせう。あつしも隨分いろ/\の毒死は見ましたが、お内儀のやうなのは始めてです。石見いはみ銀山とか鳥兜とりかぶととか、斑猫はんめうとかいふ、ありきたりの毒とは違つたもののやうですが——」