支膝つきひざ)” の例文
その癖、先生には、かえって、遠慮の無い様子で、肩を並べるようにして支膝つきひざで坐りながら、火鉢の灰をならして、手でその縁をスッとしごく。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
支膝つきひざのまま、するすると寄る衣摺きぬずれが、遠くから羽衣の音のちかづくように宗吉の胸に響いた……畳の波に人魚の半身。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
令夫人は藤色の手柄の高尚こうとう円髷まるまげで袴を持って支膝つきひざという処へ、敷居越にこのつらが、ヌッと出た、と思いたまえ。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すぐに肩癖けんぺきほぐれた、と見えて、若い人は、隣の桟敷際へ戻って来て、廊下へ支膝つきひざ以前もとのごとし。……
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立身たちみで、框から外を見たが、こんなかどには最明寺、思いも寄らぬ令嬢風に、急いで支膝つきひざになって
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夜討に早具足はやぐそくだから、本来は、背後うしろへ廻って、支膝つきひざで、ちょっと腰板を当てるのが、景情あいともないそうなお悦……(早間に掛けては負けそうもない、四時半から髪結を起したと云う)
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
式台で声をかけると、女中も待たず、夕顔のほんのり咲いた、肌をそのままかと思う浴衣が、青白い立姿で、蘆戸よしどの蔭へ透いて映ると、すぐ敷居際に——ここに今見ると同じ、支膝つきひざの七分身。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)