攪乱かきみだ)” の例文
旧字:攪亂
法師は、喋舌しゃべりぬいている。さすが敵地にはいって民心を攪乱かきみだそうとするほどの者だけあって、不敵なつらだましいと雄弁を持っている。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
声をかけて置いて、じっと聞き耳を立てたが、吾声わがこえ攪乱かきみだした雑木山の静寂せいじゃくはもとにえって、落葉おちば一つがさとも云わぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
焔はけふり揉立もみたてられ、けむりは更に風の為に砕かれつつも、蒸出す勢のおびただしければ、猶ほ所狭ところせみなぎりて、文目あやめも分かず攪乱かきみだれたる中より爆然と鳴りて、天も焦げよと納屋は一面の猛火と変じてけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その幸福を攪乱かきみだし、冷笑し、罵倒し、その幻想の全体を極めて不愉快な、索然たるものにしてしまうのはマユミの父親の頑固な恰好をした禿頭とくとうと、母親のおおかみみたような乱杙歯らんぐいばの笑い顔であった。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
平和は再び攪乱かきみださるることとなった。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)