摂取せっしゅ)” の例文
旧字:攝取
この幸福感こそ、念仏行者が、ひとたび、絶対の摂取せっしゅにあずかるの時に、誰人たれびとでも、うけることのできる大悲の甘露なのである。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あくまで之を摂取せっしゅすれば、烏賊の細胞が彼女の肉体の細胞と同化し、柔軟、透明の白色の肌を確保するに到るであろうという、愚かな迷信である。
女人訓戒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しわに包まれた老婆の全身を埋めた刺青の醜怪しゅうかいさから、若い女の起誓ママきしょうをこめた、腕や、内股うちまたの名前や、花札はなふだや、桜なぞの刺青から、アルコール分の摂取せっしゅとか
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
以外の物質は、みなすべて、よくこれを摂取せっしゅして、脂肪しぼうもしくは蛋白質たんぱくしつとなし、その体内に蓄積ちくせきす。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
暦の中の最も大切な日を定めて、神々とともに特定の食物を摂取せっしゅすることを意味する語であった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
糖尿病とうにょうびょうの叔父は既定の分量以外に澱粉質でんぷんしつ摂取せっしゅする事を主治医から厳禁されてしまったのである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これまでの日本人には大変科学知識が欠けていたし、今でも科学知識の摂取せっしゅを非常に苦しがっている。だが、若い日本人には、科学知識の豊富なものが随分と沢山できてきた。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
相嘗は相饗そうきょうまたは共饌きょうせんも同じ意で、神と人と同時に一つの食物を摂取せっしゅせられることとしか考えられぬが、是がもし『玉勝間たまかつま』などの説くように、ただ御相伴ごしょうばんという意味であったならば
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
支那の思想の健全なところだけを、本能のように選んで摂取せっしゅしますからね。日本では支那を儒教の国と思っているようですが、支那は道教の国です。民衆の信仰の対象は、孔孟でなく、神仙です。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)