“携(も)” の例文
この人が来る時は、よく私に物を携(も)って来てくれました。この人が帰って去(い)った後で、爺さんは必(きっ)と白銅を一つ握っておりました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
童子は、手に携(も)った笛を腰のあたりに差した。そして童子自身が困りぬいたかおをして見せた。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「どけどけ、医者が来たんだ」私の傍にいた男は露路の外に停った自動車の音をきいて、後を振向いた途端、男の携(も)っていた懐中電灯がパッと私の足下を照らしていった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
その父は、半歳程經つて近所に火事のあつた時、人先に水桶を携(も)つて會堂の屋根に上つて、足を辷らして落ちて死んだ。天晴な殉教者だと口を極めて布教師は作松の徳を讃へた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
村の人々は十五日の前の晩に色々のお斎糧を集めては、そのおかえりの時に侑(すす)めるのでございますけれど、それとても、ほんのお携(も)ちになれるだけしかお提(さ)げになりません。
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
その父は、半歳程経つて、近所に火事のあつた時、人先に水桶を携(も)つて会堂の屋根に上つて、足を辷らして落ちて死んだ。天晴(あつぱれ)な殉教者だと口を極めて布教師は作松の徳を讃へた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
叔母一行が来て家中(やうち)が賑つてる所へ、夕方から村の有志家が三四人、門前寺の梁(やな)に落ちたといふ川鱒を携(も)つて来て酒が始つたので、病床のお柳までが鉢巻をして起きるといふ混雑
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)