掛矢かけや)” の例文
掛矢かけやふるって、玄関の大戸が見事に打ち破られるのを正面に立って眺めていたが、その時、門番小屋から、小者らしい男の影が、いたちのように樹蔭こかげへ走った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成る程、掛矢かけやでブンなぐっても潰れそうもない面構えだ。取敢えず敬意を表するために、吾輩は山高帽を脱ぎながらツカツカと進み寄って、うやうやしく頭を下げた。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「左様でござります、なんにしても乱世でござりますから、盗賊も大袈裟おおげさで、掛矢かけや大槌おおづちを以て戸を表から押破って乱入致し、軍用金を出せ、軍用金を出せとおどしますとやら」
掛矢かけやで叩き込んだやうに、刀が首筋を突拔けたのはその爲だ。金之進は武藝の心得は相當にあつたらしいが、落ちる所を下から突き上げられてはひとたまりもあるものぢやない」
「こぶの清七が暴れてるんだ」と松田はどなり返した、「もう三人もやられたが、あのくそ野郎は掛矢かけやを持ってるからどうしようもねえ、くたびれるのを待つよりしようがねえんだ」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
すると間もなく、向うの方で大きなひびきがしはじめました。掛矢かけやでもって扉を叩き割るような恐ろしい物音です。それは今から考えてみますと、どうも事務室の入口のように思われました。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
早くも大玄関は打ち破られ、書院の大戸を、掛矢かけやで打ち破っている人影が見える。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)