指点してん)” の例文
第三に創作の構造、これなども、段々古い技巧の衣をぬぎ捨てゝ、一直線に新技巧に向つて進んだ著しい跡が歴々と指点してんされる。
明治文学の概観 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
向うの村のこずえに先ずおとずれて、丘の櫟林、谷の尾花が末、さては己が庭の松と、次第に吹いて来る秋風を指点してんするに好い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
船頭はフオスカリだの、ムシユコだの、バルバルコだのと昔の主人の貴族の名を呼びつつ其邸そのやしき指点してんして教へた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
これは藩主にして、彼は世臣せいしんの相違はあれども、薩長二藩の関原以来蓄積したる活力を擢揮てっきし、大勢の趨向すうこう指点してんし、時艱じかんすくうの人物を鼓動したるは、実に二人先導の功に帰せざるを得ず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この作者のものは、この前にも二三度読んだことがあるが、次第に主観の中から客観性をつかみ出さうとし、又は主客合一の境に入らうとしてゐるのが微かながらも指点してんされた。
自他の融合 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
独り封建社会の継児たる智勇弁力の徒が指点してんして待ちたる動乱の機は来れり。ろう上に太息せる陳勝、爼辺そへんに大語せる陳平、窮巷きゅうこうに黙測する范増はんぞう圯上いじょうの書を玩味がんみする子房、彼らが時は既に来れり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)