きょう)” の例文
紀州安堵峯辺でいう、栗鼠りすは獣中の山伏で魔法を知ると、これややもすれば樹枝に坐して手をきょうし礼拝の態をすに基づく。
しかりしかして子弟の沈溺するを見、手をきょうして救わずんば、なんぞ父母兄弟たるにあらん、なんぞ民をするにあらん、またなんぞ不仁不慈のそしりを免れんや。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
長八は渋江氏の江戸を去る時墓木ぼぼくきょうしていたが、久次郎は六十六歳のおきなになって生存ながらえていたのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
敢て今回に限らず、御食事の際はいつも御自身お持ち合せの品で、御器用にいろいろの料理をおつくりになる。其御堪能さにお伴の者は、手をきょうして感じ入るのみであった。
なりゆき任せに手をきょうしていることができない、落着くべきところに事物を落着かせ、成るべきように国家を成らしめんがためにこそ、我々は身命を顧みず東奔西走しているのだ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
与良氏よらうじ墓木ぼぼくきょうして紅葉もみじせり
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
とすれば、彼等の為すところは、朝廷を擁して、その御稜威の下に権柄をわが手に占めて行こうとする策略があるのみだが、そうなってみると、堂上公卿が得たりとばかり手をきょうしてはいないのだ
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)