押鎮おししず)” の例文
旧字:押鎭
狭心症にかかっているせいか、一寸ちょっとした好奇心でも胸がドキドキして来そうなので、便々たる夏ぶとりの腹を撫でまわして押鎮おししずめた。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
急立せきたつ胸を押鎮おししずめ、急ぎ宅へ帰って宅の者を見届につかわしましたる所、以前にいや増す友之助の大難、最早棄置すておき難しと心得、早速蟠龍軒の屋敷へ駈付け、只管ひたすら詫入り
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
看護婦がベッドへ飛んで行って、もがく病人を押鎮おししずめようとしたが、瀕死ひんしの老探偵は、まるで気違いの様に身もだえをして、苦しさに耐えぬものの如く、わめき続けるのだ。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
文三も暫らくは鼻をもつぶしていたれ、ついには余りのけぶさに堪え兼て噎返むせかえる胸を押鎮おししずめかねた事も有ッたが、イヤイヤこれも自分が不甲斐ふがいないからだと、思い返してジット辛抱。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)