折烏帽子おりえぼし)” の例文
上着は紺色の闕腋けってきで、頭には折烏帽子おりえぼしかぶり、下には水浅葱みずあさぎ色の段袋を穿くという、これはすべて岡倉覚三先生の趣味から来たものであったが
美術学校時代 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
そこには藍摺あいずり直垂ひたたれに、折烏帽子おりえぼしの、色の黒いやせた男が、じっと立っているのであった。その人こそ、奥方が夢にも忘れたことのない重衡であった。
大きな折烏帽子おりえぼしが、妙に小さく見えるほど、頭も顔も大の悪僧の、鼻がひらたく、口が、例のくいしばった可恐おそろしい、への字形でなく、唇を下から上へ、への字を反対にしゃくって
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一塊は恐ろしくとがっている、そうして四辺あたりに山もないように、この全体が折烏帽子おりえぼし形に切ッ立って、壁下からは低い支脈が、東の谷の方へと走っている、能呂のろ川があの下から出るのだと
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
狩衣かりぎぬ差貫さしぬきようのもの、白丁はくちょうにくくりばかま、或いは半素袍はんすおう角頭巾かくずきん折烏帽子おりえぼし中啓ちゅうけい、さながら能と神楽かぐらの衣裳屋が引越しをはじめたようにゆるぎ出すと、笛と大拍子大太鼓がカンラカンラ
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それまでの闕腋けってき折烏帽子おりえぼしを止めにして普通の金釦きんボタンにしてしまった。初めに闕腋を恥かしがったのが、今度はこんな金釦になってつまらないという気がしてならなかった。
美術学校時代 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)