抑圧よくあつ)” の例文
旧字:抑壓
年暮くれの町では、これらの好影響もあり、また余りに抑圧よくあつされた人間欲の反動からも、これまでにない活気と賑わいを見せていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国家の本質は、単に功利的な個人の道具でも、必要悪というようなものでも、階級的な搾取さくしゅ抑圧よくあつの手段でもない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
支那人は、抑圧よくあつせられ、駆逐くちくせられてなお、余喘よぜんを保っている資本主義的分子や、富農や意識の高まらない女たちをめがけて、贅沢品を持ちこんでくるのだ。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
まわりから抑圧よくあつして来る俗人たちの鼻を明かそうとする、つまり押つけ結婚に対する自由結婚の味方にわたくしをして、先手を打つつもりでございましょう。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ぼく自身に恋愛の体験がなくて、恋愛を論じては、あるいは見当ちがいになるかもしれませんが、ほんとうの恋愛はどんな時局下でも抑圧よくあつされてはならない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
私は意見の相違はいかに親しい間柄あいだがらでもどうする事もできないと思っていましたから、私の家に出入りをする若い人達に助言はしても、その人々の意見の発表に抑圧よくあつを加えるような事は
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
親戚の采女正と美濃守を差向けてきたのも、幕府の巧みな抑圧よくあつだった。血族を以て血族を制する策に出たものである。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
例えばヘーゲルにいわせれば、国家は最高の道徳で、倫理的精神の現実体であるが、エンゲルスにいわせれば、国家は階級的な抑圧よくあつ搾取さくしゅの手段にすぎない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
現実の国家に多かれ少なかれ伴うところの権力濫用らんよう幣害へいがいや、法と刑罰による人間性の歪曲わいきょくや、階級的な搾取さくしゅ抑圧よくあつの危険を排撃する点には、大きな魅力みりょくがあって
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
左衛門尉忠次さえもんのじょうただつぐは、家康の満面から、じいんと、沈みこんでゆくような、感情の抑圧よくあつを見て、反対に、ぶるると、くちびるをふるわせた。忠次には、抑えきれなかった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)