払子ほつす)” の例文
旧字:拂子
「成程な……」と客人は一寸考へるやうな眼色を見せたが、暫くすると、徐々そろ/\荷物をほどいて、なかから立派な払子ほつすを取り出した。
と、いつもの和尚様が払子ほつすを持つて出て来て、綺麗なお姫様の前へ行つて叩頭おじぎをしたと思ふと、自分の方へ歩いて来た。高い足駄を穿いてゐる。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
老僧はへちまをかいてくれた座敷に据ゑてある曲彔きよくろくのうへに金襴の袈裟をかけ、払子ほつすをもつて、昔ながらの石仏のやうに寂然と扶坐ふざしてゐる。私はそのまへへいつて昔のとほり頭をさげて焼香した。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
冠毛かむりげ払子ほつす曳く白
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
黄檗わうばく隠元いんげんが日本へやつて来た折、第一に払子ほつすを受けたのは、この独照だつたといふからには、満更まんざらの男では無かつたらしい。
そして今迄忘れてゐた髯を握つて払子ほつすのやうにつてみたが、もう間に合はなかつた。