“払塵(はたき)” の例文
旧字:拂塵
作は時ならない払塵(はたき)の音を聞きつけて、梯子段(はしごだん)から銀杏返(いちょうがえ)しの頭を出した。僕は彼女に書架の一部を雑巾(ぞうきん)で拭いて貰(もら)った。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
箒と払塵(はたき)と雑巾(ぞうきん)とを持った女中が、慌てて駈けてきた。周平は長く廊下に待たせられた。掃除がすんで室にはいったが、先刻の黴臭い匂いが鼻についていた。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
彷徨(うろつ)きながら、見ぬ振をして横目でチョイチョイ見ていると、お糸さんが赤い襷(たすき)に白地の手拭を姉様冠(あねさまかぶ)りという甲斐々々しい出立(いでたち)で、私の机や本箱へパタパタと払塵(はたき)を掛けている。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
看護婦の払塵(はたき)の声がここかしこで聞こえた。自分は枕(まくら)を借りて、三沢の隣の空室(あきべや)へ、昨夕(ゆうべ)の睡眠不足を補いに入った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれど俺の方は、物も供えず払塵(はたき)もかけないで放っておかれる、埃と煤とにまみれたその神棚を、次第に無関心な眼で眺めるようになってきた。何もお化(ばけ)が出るわけじゃなかったのだから。
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
御米は奥で座敷へ払塵(はたき)を掛けていた。宗助はそれから懐手(ふところで)をして、玄関だの門の辺(あたり)をよく見廻ったが、どこにも平常と異なる点は認められなかった。
門 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)