打興うちきょう)” の例文
芝居や吉原に打興うちきょうじようとする者、向島へ渡るものは枯草の情趣を味うとか、草木を愛して見ようとか、遠乗りに行楽しようとか、いずれもただ物見遊山ものみゆさんするもののみであった。
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
これを聞くとかの急ぎあしで遣って来た男の児はたちまち歩みをおそくしてしまって、声のした方を見ながら、ぶらりぶらりと歩くと、女の児の方では何かに打興うちきょうじて笑い声をらしたが
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
世の常のものなればひても包みかくすべき身の恥身の不始末、乱行狼藉らんぎょうろうぜき勝手次第のたはけをば尾にひれ添へて大袈裟おおげさにかき立つれば世の人これを読みて打興うちきょうじ遂にはほめたたへて先生とうやまふ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
余は日々にちにち時代の茶番に打興うちきょうずる事をつとむると共に、また時としては心ひそかに整頓せる過去の生活を空想せざるを得ざりき。過去を夢見んには残されたる過去の文学美術の力によらざるべからず。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
余は日々にちにち時代の茶番に打興うちきょうずる事をつとむると共に、また時としては心ひそかに整頓せいとんせる過去の生活を空想せざるを得ざりき。過去を夢見んには残されたる過去の文学美術の力によらざるべからず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)