打伏うちふ)” の例文
きくる涙にむせびながら、掻き口説くどことも定かならず、亂れし心を押し鎭めつ、眼を閉ぢかうべを俯して石階の上に打伏うちふせば、あやにくや、沒落の今の哀れに引きくらべて、盛りなりし昔の事
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
車馬しゃばの通行をめた場所とて、人目の恥に歩行あゆみも成らず、——金方の計らひで、——万松亭ばんしょうていと言ふみぎわなる料理店に、とにかく引籠ひっこもる事にした。紫玉はただ引被ひっかついで打伏うちふした。が、金方きんかたは油断せず。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)