手甲てこう)” の例文
二人が、チンドン屋の寅太郎とらたろうという、いつも手甲てこう脚絆きゃはん大石良雄おおいしよしおを気取って歩く男を捉えたのは、それから間もなくの出来ごとだった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
兜はなくて乱髪がわらくくられ、大刀疵たちきずがいくらもある臘色ろいろ業物わざものが腰へり返ッている。手甲てこうは見馴れぬ手甲だが、実は濃菊じょうぎくが剥がれているのだ。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
よく似合っていて、まるで忠臣蔵の与市兵衛でも見るようであった。納豆屋は五十がらみのおばさんで、手拭をかぶり、手甲てこう脚絆きゃはんに身を固めていた。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
「赤い手甲てこうに赤い脚絆きゃはんに、長い振り袖に鬱金うこん襷姿たすきすがたのほうが縹緻よりも、もっともっと結構だと」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そこでほこらの扉を開けた。中には袈裟けさ頭陀袋ずだぶくろかさ手甲てこう脚絆きゃはんの一切が入っていた。道家は老人のことばに従ってそれを着て旅僧たびそうの姿になり、うしこくになって法華寺の別院へ往った。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
笠や頭巾ずきんや顔網や背中当や腰廻こしまわし手甲てこうや、幾つのものを身につけるのでしょうか。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
赤い手甲てこうに赤い脚絆きゃはん鬱金うこんたすきをかけている。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)