扇屋おうぎや)” の例文
名前の詮索せんさくばかりするようであるが、この林屋与次兵衛というのも、楼主の表名前であって、遊女屋としての暖簾名のれんなは、扇屋おうぎやというのであった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも花見ではない、初桜はつざくら故余り人は出ません、其の頃には海老屋えびや扇屋おうぎやの他にい料理茶屋がありまして、柏屋かしわやというは可なり小綺麗にして居りました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「私は扇屋おうぎやに二十年も奉公してゐますだ。旦那樣は江戸一番の大通で、結構な御主人でごぜえましたよ。奉公人は可愛がつて下さるし、金離れが綺麗だし」
嫁女よめじょ道中も三日がかりとして、飯田いいだ泊まりの日は伝馬町屋てんまちょうや。二日目には飯島いいじま扇屋おうぎや泊まり。三日目に南殿村着。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
何を思って、黙って酒席を抜けて来たのか、武蔵は廊下へ出ることは出たが、扇屋おうぎやの奥の広さに、勝手がわからないで、独りでまごついていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「時の鐘の話ぢやありませんよ。扇屋おうぎやの丹右衞門が、向島の寮で殺されたことを親分に知らせた筈ですよ」
それから囲炉裏ばたにかしこまって、主人らのしたくのできるのを待った。寿平次は留守中のことをわき本陣の扇屋おうぎやの主人、得右衛門とくえもんに頼んで置いて、柿色かきいろ黒羅紗くろらしゃえりのついた合羽かっぱを身につけた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だつて、扇屋おうぎやの店中の者は一度づつはみんな縛られましたよ。お民を縛つてお園を縛つて、下女のお喜代を縛つて、手代の小半次を縛つて、今度は庭男の幸助を
さて、扇屋おうぎやは出て来たが、まだ遊廓くるわの内である。どうしたらこの囲いから無事に世間へ出られるだろうか。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうじゃ、扇屋おうぎやの吉野太夫」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)