懸隔かけへだ)” の例文
ふだんは至って円満にっているこの両家老は、実は、まったく懸隔かけへだてた性格の持主であったことを知って、人々は、思わず眼をみはってしまう。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
作「静かにたって、大丈夫でえじょうぶ人子ひとっこ一人通らねえ土手下の一軒家田や畑で懸隔かけへだって誰も通りゃアしねえから心配しんぺえねえよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
どう考えてもこの懸隔かけへだった二つの現象に、同じ自分が支配されたとは納得できなかった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我々は一しよに大学前の一白舎いつぱくしやの二階へ行つて、曹達水ソオダすゐに二十銭の弁当を食つた。食ひながらいろんな事を弁じ合つた。自分と成瀬との間には、可也かなり懸隔かけへだてのない友情が通つてゐた。
あの頃の自分の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
森を出抜ける頃には、既に十五六けん懸隔かけへだたってしまった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
身分からいえば、彼と右近とでは、比較にならないほど、懸隔かけへだてがある。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三千代のあにと云ふのはむしろ豁達な気性で、懸隔かけへだてのない交際振つきあひぶりから、友達ともだちにはひどく愛されてゐた。ことに代助は其親友であつた。此あには自分が豁達である丈に、妹の大人おとなしいのを可愛かあいがつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)