ぼう)” の例文
鳴きながら、伝うて飛ぶのを、ぼうとして仰ぎながら、導かれるようにふらふらと出ると、声の止む時、壇階子の横を廊下に出ていた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
指環は緑紅りょくこうの結晶したる玉の如きにじである。まぶしかつたらう。坊主はひらいた目も閉ぢて、ぼうとした顔色がんしょくで、しつきりもなしに、だら/\とよだれを垂らす。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
指環は緑紅の結晶したる玉のごときにじである。まぶしかったろう。坊主は開いた目も閉じて、ぼうとした顔色がんしょくで、しっきりもなしに、だらだらとよだれを垂らす。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫人はふいとふすまを出て、胸をおさえて、じっと見据えた目に、閨の内をみまわして、ぼうとしたようで、まだ覚めやらぬ夢に、菫咲く春の野を徜徉さまようごとく、もすそも畳にただよったが、ややあって
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見える女の姿に、心はやみの目はぼうとして白い雪、睫毛まつげに解けるかしずくが落ちた。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お嬢さん……」とまだぼうとしている。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのこゝろぼうつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)