憶起おもひおこ)” の例文
憶起おもひおこす。……先生せんせいは、讀賣新聞よみうりしんぶんに、寒牡丹かんぼたん執筆中しつぴつちうであつた。横寺町よこでらまちうめやなぎのおたくから三町さんちやうばかりへだたつたらう。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
端無はしなく彼は憶起おもひおこして、さばかりはありのすさびに徳とも為ざりけるが、世間に量り知られぬ人の数の中に、誰か故無くして一紙いつしを与ふる者ぞ、我は今へいせられし測量地より帰来かへりきたれるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そゞろ昨夜さくや憶起おもひおこして、うたた恐怖の念にへず、斯くと知らば日のうちに辞して斯塾を去るべかりし、よしなき好奇心に駆られし身は臆病神の犠牲となれり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
憶起おもひおこふしもありや、と貫一は打案じつつもなかばは怪むに過ぎざりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)