憐憫れんみん)” の例文
大人か小児こどもに物を言うような口吻こうふんである。美しい目は軽侮、憐憫れんみん嘲罵ちょうば翻弄ほんろうと云うような、あらゆる感情をたたえて、異様にかがやいている。
余興 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
彼の監督の役目もまた、道理と嚴格とを、慰安と經濟とを、憐憫れんみん誠實せいじつとをどんな工合に組合せるかといふ事を知つてゐる人々との協力で行はれた。
しかし自分の病人に対する同情が次第に薄らいで来る。憐憫れんみんが変じて神経過敏になって、苦痛が変じて恐怖と冷淡との混合物になって来る。しかし自分が悪い人になったとは思われない。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
ぼくは今もそう者にしていさぎよくたゝか關根せきね名人の磊落性らいらくせいむし愛敬あいけいし、一方自しつつ出でざるさか田三吉八だんに或る憐憫れんみんさへかんじてゐる者だが、將棋せうきだけはわかい者にはてないものらしい。