いとお)” の例文
歌津子は空を仰いだり彼らの歌に耳をすまして微笑ほほえんだり、今買った京人形をいとおしんだりして歩いていた。
青草 (新字新仮名) / 十一谷義三郎(著)
それは日輪の下に一つの花芯かしんをつつんで生命をいとおしみあう花弁のむつみと違わない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蕭条しょうじょうとした山野の中を、孤独に寂しく漂泊していた旅人芭蕉が、あわれ深く優美に咲いた野花を見て、「かさに挿すべき枝のなり」といとおしんだ心こそ、リリシズムの最も純粋な表現である。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)