悪疾あくしつ)” の例文
実は良雄の悪疾あくしつに感染しての結果であると知られたならば、諸君は定めし、あさ子を捨てた良雄をにくまれるにちがいない。
血の盃 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
七出というのは、子無きが一、淫佚いんいつが二、舅姑きゅうこつかえざるが三、口舌くぜつ多きが四、盗窃が五、妬忌ときが六、悪疾あくしつが七である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まず一章全部と二章前半を見よ、ヨブに大災禍臨みて産はことごとく奪われ、子女は悉く殺され、身は悪疾あくしつに襲われ、最愛の妻さえ彼をののしるに至ったのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
岩間小熊、土子泥之助なる三人の高弟が看病をしているうちに、根岸兎角はみとりにき、悪疾あくしつの師一羽を捨て武州に出で芸師となり、自派を称して微塵みじん流とあらため世に行われた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
良家の女相約して男子の花柳病を患うるものに嫁せざる事を名けて拒婚同盟となすという。愚も亦甚しというべし。悪疾あくしつあるものに嫁する事の理にあらざるは論を俟たず。何ぞ花柳病のみに限らんや。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
悪疾あくしつに襲わるるもまた忍び得よう。しかし寂しき人生の旅路における唯一の伴侶ともたる妻が自ら信仰を棄てしのみならず、進んで信仰放棄を勧むるに会して、彼の苦痛は絶頂に達したのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)