いぶせ)” の例文
彼はその夫とともに在るをはんやう無きわづらひなれど、又そのひとりを守りてこの家におかるるをもへ難くいぶせきものに思へるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
然れども待ちつる情をあらはしまをさずてはいぶせくてえあらじと思ひて、百取の机代物を持たしめて参出でたてまつりき。
枕物狂 (新字旧仮名) / 川田順(著)
次に大雀の命は、天皇の問はしたまふ大御心を知らして、白さく、「兄なる子は、既に人となりて、こはいぶせきこと無きを、弟なる子は、いまだ人とならねば、こを愛しとおもふ」
熱灰ねつかいの下より一体のかばねなかば焦爛こげただれたるが見出みいだされぬ。目も当てられず、浅ましういぶせき限を尽したれど、あるじの妻とたやすく弁ぜらるべき面影おもかげ焚残やけのこれり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
然れども待ちつる心を顯はしまをさずては、いぶせきにへじ
犬のねむれるなど見るもいぶせきに、静緒は急ぎ返さんとせるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)