恋歌れんか)” の例文
旧字:戀歌
以て汝のために恋歌れんかきょうし(ソロモンの雅歌)、汝のために軍談ぐんだんを述ぶべし(約書亜ヨシュア記士師記)、貞操美談あり(路得ルツ記)、慷慨歌あり(耶利米亜エレミア記)
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
あの男は琵琶びわでもき鳴らしたり、桜の花でも眺めたり、上臈じょうろう恋歌れんかでもつけていれば、それが極楽ごくらくじゃと思うている。じゃからおれに会いさえすれば、謀叛人の父ばかり怨んでいた。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
新古今からでもとったらしい恋歌れんかを一首添えて署名はただ「き」とだけ記してあった。奈尾の顔はあおざめた、けれども眼は酔ったように恍惚こうこつとうるみを帯び、それがしぜんと閉じられた。
合歓木の蔭 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ゲエテをワイマアルの宮廷から退しりぞかせたのはフオン・ハイゲンドルフ夫人である。しかも又シヨオペンハウエルに一世一代の恋歌れんかを作らせたのもやはりこのフオン・ハイゲンドルフ夫人である。
続澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
梅花はこうを放つも我に益なし、鶯は恋歌れんかを奏するも我に感なし、身を立て道を行い名を後世に遺すの希望は今は全く我にあるなく、心を尽し力を尽し国と人とを救うの快楽も今は我の有に帰せず
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
己はあの生真面目きまじめな侍の作った恋歌れんかを想像すると、知らず識らず微笑が唇に浮んで来る。しかしそれは何も、渡をあざける微笑ではない。己はそうまでして、女にびるあの男をいじらしく思うのだ。
袈裟と盛遠 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)