性来しょうらい)” の例文
旧字:性來
私は性来しょうらい騒々そうぞうしい所がきらいですから、わざと便利な市内を避けて、人迹稀じんせきまれな寒村の百姓家にしばらく蝸牛かぎゅういおりを結んでいたのです……
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
元々木や石で出来上ったと云う訳ではないから人の不幸に対して一滴の同情くらいはゆうに表し得る男であるがいかんせん性来しょうらい余り口の製造に念がっておらんので応対に窮する。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おれは、性来しょうらい構わない性分だから、どんな事でも苦にしないで今日まで凌いで来たのだが、ここへ来てからまだ一ヶ月立つか、立たないうちに、急に世のなかを物騒ぶっそうに思い出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は性来しょうらい元気な男であった。その上酒を呑むとますます陽気になる好い癖を持っていた。そうして相手が聞こうが聞くまいが、頓着とんじゃくなしに好きな事を喋舌しゃべって、時々一人高笑いをした。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まあお這入はいりよ、お前から」と云った母は、兄の首や胸の所をながめて、「大変好い血色におなりだね。それに少し肉が付いたようじゃないか」とめていた。兄は性来しょうらいやせっぽちであった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)