思返おもいかえ)” の例文
と、そう思返おもいかえしたものの、やはり失望しつぼうかれこころにいよいよつのって、かれおもわずりょう格子こうしとらえ、力儘ちからまかせに揺動ゆすぶったが、堅固けんご格子こうしはミチリとのおともせぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
銭勘定ぜにかんじょうの事よりも記憶に散在している古人の句をば実にうまいものだと思返おもいかえすのであった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と云って襖を締めてきましたが、二人は今夜死のうというのですから寝ても寝られません。種々いろ/\思返おもいかえして見たが、死神に取付かれたと見えまして、思い止ることが出来ません。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
芸者なんぞになっちゃいけないと引止めたい。長吉は無理にも引止めねばならぬと決心したが、すぐそのそばから、自分はお糸に対しては到底それだけの威力のない事を思返おもいかえした。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)