怖氣おぢけ)” の例文
新字:怖気
夢は私の耳の傍へ近づくか近づかない間に、骨の髓もこほる程の恐ろしい出來事におびやかされて怖氣おぢけづいて逃げ去つた。
「人間一人消えてなくなつたよ、——尤も、思ひ立つて何にか頼みに來ても、急に怖氣おぢけづいて歸るのは、若い女にはよくあることだよ。——どんな風をしてゐたんだ、その女は」
その上、初枝は自分の病氣に怖氣おぢけづき、もうすつかり寢たきりになつてしまつた。
ふるさとびと (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
凌雲閣には餘り高いのに怖氣おぢけ立つて、到頭上らず。吾妻橋に出ては、東京では川まで大きいと思つた。兩國の川開きの話をお吉に聞かされたが、甚麽どんなことをするものやら遂に解らずじまひ。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
母の側へ行くのに怖氣おぢけをふるつてゐた竹丸は、お駒に引ツ張られ、定吉に押されて、病室の入口の襖の蔭まで來てゐたので、それを見た千代松は否應いやおうなしに連れ込んで、京子の枕元に坐らした。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
娘はもう怖氣おぢけを振つてをりましたし、父親も、貧乏はして居ても、娘にめかけ奉公まではさせたくないと、堅いことを申してをりました。それに、娘には芦名光司あしなくわうじ樣といふ、親しい人もありました。
傳染病に怖氣おぢけのついた、意地惡いぢわるの管理人が逃げてしまつて、ロートン施療院せれうゐんの看護婦長だつた、彼女の後任者は、まだ新しい家のきまりに慣れてゐないので、比較的にもの惜しみをないでまかなつた。
お品は氣象者で、申分なく怜悧な女でしたが、それでも血腥ちなまぐさい事件には怖氣おぢけをふるひ、神田明神下に飛んで行つてはツイ、仲の好いお靜に助太刀を頼んで、事毎に錢形平次を引つ張り出すのでした。