心算しんさん)” の例文
ただ表面うわべに現われて居る傾向だけをもって、あるいはツァンニー・ケンボその人の心算しんさん計画がうまく図に当って居るところだけに眼を着けて内部の事情をおろそかにすると
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「ちと心算しんさんもござりますゆえ、なにごとも拙者せっしゃの胸におまかせをねがいます。ではわが君、民部どの、きょうから四日のちに、三百人の軍兵ぐんぴょうとともにお目にかかるでござりましょう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
妻の手前ながら定めて断腸だんちょうの思いなりしならんに、日頃耐忍たいにん強き人なりければ、この上はもはや詮方せんかたなし、自分は死せる心算しんさんにて郷里に帰り、田夫野人でんぷやじんして一生を終うるの覚悟をなさん。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「そうして彼自身偽造の遺言——将軍様ご遺言をふりかざし、西丸様を弾劾だんがいし、京師五摂家の公達一人を奉戴ほうたいして十一代将軍とし、自身は大老となる心算しんさんとか。……越中守様そう申されたよ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)