心快こころよ)” の例文
かく言ひつつ彼は艶々つやつやあからみたる鉢割はちわれの広き額の陰に小く点せる金壺眼かねつぼまなこ心快こころよげにみひらきて、妻が例の如く外套がいとうぬがするままに立てり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「それじゃ心快こころよく僕の云う事を聞いてくれてもよかろう。自分で不愉快の眼鏡を掛けて世の中を見て、見られる僕らまでを不愉快にする必要はないじゃないか」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
耳に心快こころよったのか、また心に沁みたのか、やはりイエという少女の肉声の持つ抒情であったろう。竹の子剥ぎの際に感じたのと同じような恍惚こうこつを私はこのときにも味わった。
前途なお (新字新仮名) / 小山清(著)
大口いて馭者は心快こころよげに笑えり。白糸は再び煙管をりて、のどかにけぶりを吹きつつ
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)