しる)” の例文
村に入って見ると、祭なるがためにかえって静かで、ただ遠く高柱たかはしらしるしののぼりが、定まった場所に白くひるがえるを望むのみである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼らが山という神の宮居を仰いで、そこにあらたかな神慮のしるしを占ったとて、けっして怪しむにたりないであろう。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
画布は、すでに死膚の白さに彩られているはずである。なぜならそこには、生のただ一つのしるしである生そのものへの疑問記号フラーゲツアイヘンを失っているからである。
絵画の不安 (新字新仮名) / 中井正一(著)
手前愚考致しまするに屋台店の夜毎に寂れますのは、必ずしも町民共の懐中衰微のしるしとばかりは思われませぬ。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
白い格闘が果てしなく繰返され、つひにある時明子はその最後のしるしを見た様に思つた。不幸なことに、全く同時に彼女は心臓の激しい発作で卒倒しかけた。突然一つの腕が彼女を支へた。
青いポアン (新字旧仮名) / 神西清(著)