御徒士おかち)” の例文
中でも筆頭第一の Pharisien は井上典蔵と云ふ御徒士おかちである。これもまた妙な男で、虱をとると必ず皆食つてしまふ。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
下谷御徒町したやおかちまちに住んでいる諸住もろずみ伊四郎という御徒士おかち組の侍が、よんどころない用向きの帰り路に日本橋の浜町河岸を通った。
異妖編 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「わしは龍泉寺に住む、小池喜平こいけきへいという御徒士おかちの者じゃが」侍から先に身分をあかして、立話のまま来意を話しだした。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この婦人が幕府の御徒士おかちの榎本円兵衛えんべえと云う人に嫁して設けた次男が榎本釜次郎です。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今やと相待たりさて役人方の上席は老中井上河内守殿若年寄わかどしより大久保長門守殿石川近江守殿寺社じしや奉行黒田豐前守殿左の方には大目付おほめつけ有馬出羽守殿おん目付松浦與四郎殿其外評定所留役とめやく御徒士おかち目付めつけ小人こひと目付めつけに至るまで威儀ゐぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それは、虎五郎が息をひきとった際に、御徒士おかちの小池喜平と名乗って長屋をおとずれ、その場でお三輪と乙吉の養育をひきうけて行った、あの若党連れの侍であった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは森権之進ごんのしんと云ふ中老のつむじ曲りで、身分は七十俵五人扶持ぶち御徒士おかちである。この男だけは不思議に、虱をとらない。とらないから、勿論、何処どこと云はず、たかつてゐる。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大原右之助は二十二歳で御徒士おかち組の一人としてきょうのお供に加わって来ていた。
鐘ヶ淵 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
龍泉寺町にすむ御徒士おかちといわせて、その身がらを引き取ってくると、ちょうど、浅草寺せんそうじの闇の中に、お十夜や周馬や一角などが、何か待ち伏せでもしているようなので
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御徒士おかちの屋敷だの、寺だのが、混みあっている町中の狭い忍川しのぶかわのふちを曲がって
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)