得挙えあ)” の例文
油断せる貫一が左の高頬たかほを平手打にしたたくらはすれば、と両手に痛をおさへて、少時しばしは顔も得挙えあげざりき。蒲田はやうやう座にかえりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
枕をも得挙えあげざりし病人の今かくすこやかに起きて、常に来ては親く慰められし人のかたくなにも強かりしを、むなし燼余じんよの断骨に相見あひみて、弔ふことばだにあらざらんとは
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼はくちびるの寒かるべきを思ひて、むなし鬱抑うつよくして帰り去れり。その言はざりしことばただちに貫一が胸に響きて、彼は人のにけるあとも、なほ聴くにくるしおもて得挙えあげざりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)