後味あとあじ)” の例文
立て続けにも一口飲んで、徳利を膝の上に両手で握りしめたまま、口の中に残ったかんばしい後味あとあじを、ぴちゃりぴちゃりと舌鼓うった。
特殊部落の犯罪 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
シャンパンのまずい後味あとあじが、煙草を吸いたい気持を誘った。彼は機械的に巻煙草を一本取り出すと、マッチをすって火をつけた。
餓えた人々 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
ひどく後味あとあじが悪い。じぶんでは、さほど理屈っぽい女だと思っていないが、やさしく話をすることができないので、みなを怒らせてしまうらしい。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
と云うのは、今日の見合いが如何いかにも後味あとあじが悪かったので、もしあのまま雪子と大垣駅頭で別れたとしたら、云いようのないいやな気持がいつまでも残ったであろうからであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
後味あとあじのよい、カラッとした解決が得られるのではないかと、考えていたのであった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いつの場合も、妙に後味あとあじを持たせるようなことをいう癖のある男ではある——。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
王老師は、ちょっと後味あとあじのわるさに不機嫌な表情をつくった。
柴田家の一行は、今度という今度、まことに後味あとあじのわるい帰路を味わった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)