弾煙たまけむり)” の例文
すでに味方の左翼が猛突撃を起しているにかかわらず、しきりと弾煙たまけむりのみ立てて、火器の威力をたのみ過ぎていたためである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしこの鈍い音響も、また途端にばくとして揚がった弾煙たまけむりの匂いも、甲冑の武者の血を猛ぶらすには充分なものだった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それへ向って、対岸のよしの中から、ぱッと弾煙たまけむりが立ち、つづいて、パチパチパチとつるべ撃ちがそそがれたのであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊織は、耳を抑えて、熊笹の中へッ伏した。とたんに、うすい弾煙たまけむりのながれた樹陰で、ぎゃッ——と、生き物が断末を告げる刹那の——あの不気味なさけび声が聞えた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その虚をいたのである。淵之助にならって、阿部仁右衛門も岸九兵衛も、劣らじと、捨身に出た。パパパッとあわてた弾煙たまけむりが立った。こう撃つ弾はあたっていないこと確かである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だれかとおもうと、さいぜん、弾煙たまけむりのなかにたおれた木隠龍太郎こがくれりゅうたろうである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
果たせるかな、妙見坂を降り、尾野路ノ浜のなぎさまで見える平地まで来ると、俄然、両側から、佐久間勢の押太鼓が、耳もろうせんばかり鳴りとどろき、あたりも見えぬ弾煙たまけむりが、中川隊をつつみ出した。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)