強羅ごうら)” の例文
「軽井沢は去年行ったし、妾今年は箱根へ行こうかしらと思っているの。今年は電車が強羅ごうらまで開通したそうだし、便利でいゝわ。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
しょぼ降る雨のなかを一本のかさで、石のごろごろしている強羅ごうら公園を歩いている時も、ここで一夏一緒に暮らしてみたいようにささやくかと思うと
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
箱根はこね強羅ごうらを思い出させる。また信州しんしゅうに「ゴーロ」という山名があり、高井富士たかいふじの一部にも「ゴーロ」という地名がある。上田うえだ地方方言で「ゴーロ」は石地の意だそうである。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
箱根山中の温泉で強羅ごうらという地名を久しく注意していたところ、ようやくそれが岩石の露出している小区域の面積を意味するものであって、耕作その他の土地利用から除外せねばならぬために
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
こうした旅の最後は、去年の夏の強羅ごうらの宿だった。いつもは大勢揃って出かけるのだが、今度は一夏中と云うので、自然たいくつだろうから、一人乃至ないし二人で別れ別れで来る様にと云われていた。
解説 趣味を通じての先生 (新字新仮名) / 額田六福(著)
病後静養のために箱根に転地、強羅ごうら一福いちふく旅館に滞在。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
於函嶺強羅ごうら
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「ねえ! 図書室なんか、明日いらっしゃればいゝのに。今夜は強羅ごうら公園へ行こうと思うの。ねえ! いゝでしょう。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
強羅ごうら公園で、お互の心からなるきよい愛に、溶け合った美奈子みなこ瑠璃子るりことが、其処そこに一時間以上も費して、宮の下へ帰って来たのは、夜の十時を廻った頃だった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)