弱法師よろぼうし)” の例文
おそらく高氏自身の大酒の酔も、このとき、その極に達していたのだろう。とつとして彼の口から、田楽歌でんがくうたの“弱法師よろぼうし”がよろよろ歌われ出していた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おもてが一斉に眼を開けた。邯鄲かんたん男、やせ男、泥眼、不動、弱法師よろぼうし、岩壁に懸けられて夢見ていた、二百の面が彼女を見た。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
此種の日想観なら、「弱法師よろぼうし」の上にも見えていた。舞台を何とも謂えぬ情趣に整えていると共に、梅の花咲き散る頃の優なる季節感がなびきかかっている。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
柏崎、三井寺、桜川、弱法師よろぼうし葵上あおいのうえ、景清、忠度(囃子)、鵜飼うかい、遊行柳(囃子)
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
これは、大和田楽やまとでんがくの組と、花夜叉の組が申しあわせて、こよいの最終に“天王寺の弱法師よろぼうし”と称する一法師と天狗群の大舞おおまいを演ずるための扮装だった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しわがれ声をしぼって、老齢らしい弱法師よろぼうしが懸命にいった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弱法師よろぼうし。共に舞おうよ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)