延板のべいた)” の例文
濃厚にかさを持って、延板のべいたのように平たく澄んでいる、大岳の影が万斤の重さです、あまりしずかで、心臓ハート形の桔梗の大弁を、象嵌ぞうがんしたようだ
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
花かつたあるは葉か、所々がはげしく光線を反射して余所よそよりも際立きわだちて視線を襲うのは昔し象嵌ぞうがんのあった名残でもあろう。猶内側へ這入はいると延板のべいたの平らな地になる。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今これら歌麿が美女の長く身にまとひたる衣服の着様きざまを見るに腰と腿のあたりにてさなが延板のべいた
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その廃墟はいきょの中の一軒の農家にはなお人が住んでいる。その家の入り口は中庭に面している。そのとびらには、ゴティック式錠前のりっぱな延板のべいたのわきに、斜めにつけられた三葉剜形わんけいの鉄の柄がある。