年経としふ)” の例文
旧字:年經
そこぞと思ふ天井も、一面に黒み渡りて、年経としふる血の痕の何処いづこか弁じがたし、更科さらしなの月四角でもなかりけり、名所多くは失望の種となる。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この江は、水あくまであおく、両岸には桃の樹が多く茂っている。年経としふれば葉は河水に落ちて、一種の毒水をかもし、その水を旅人が呑めば甚だしく下痢を病む。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年経としふる狐狸のたぐいにやあらん、正体見届けんとともしをさしつけて見ればこれは意外、日頃、同学の間に誉れ高き篤学の雛僧であったので、下手人らは青くなって怖れ、かつ哀しんだけれども
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
〽立つる錦木にしきぎ甲斐なく朽ちて、逢わで年経としふる身ぞ辛き
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
初めに取れる果実このみ年経としふれどあか
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
おたがいにいつか年経としふりましたなあ
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)