平穏おだやか)” の例文
旧字:平穩
銀之助は直にもう高鼾たかいびき。どんなに丑松は傍に枕を並べて居る友達の寝顔を熟視みまもつて、その平穏おだやかな、安静しづか睡眠ねむりを羨んだらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いずれこの納まりは平穏おだやかに済むまいと見ていると、それから二人のあいだに尖った声が交換されて、しまいには二つの影がもつれ合って動き出した。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たださえおもしろからぬこのごろよけいな魔がさして下らぬ心労こころづかいを、馬鹿馬鹿しき清吉めが挙動ふるまいのためにせねばならぬ苦々しさにますます心平穏おだやかならねど
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「貴方——もし御多忙しいようでしたらここから帰って用を達して下さい。最早もう船に乗るだけの話で、海さえ平穏おだやかなら伊東へ着くのは造作ない——私ひとりで行きます」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
唯さへおもしろからぬ此頃余計な魔がさして下らぬ心づかひを、馬鹿〻〻しき清吉めが挙動ふるまひのために為ねばならぬ苦〻しさに益〻心平穏おだやかならねど、処弁さばく道の処弁かで済むべき訳も無ければ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)