帰掛かえりがけ)” の例文
その健三には昼食ちゅうじきを節約したあわれな経験さえあった。ある時の彼は表へ出た帰掛かえりがけに途中で買ったサンドウィッチを食いながら、広い公園の中を目的めあてもなく歩いた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
骨身にこたえる寒さに磯は大急ぎで新開の通へ出て、七八丁もゆくと金次という仲間が居る、其家そこたずねて、十時過まで金次と将棋を指して遊んだが帰掛かえりがけに一寸一円貸せと頼んだ。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
石田はそれから帰掛かえりがけに隣へ寄って、薄井のじいさんに、下女の若いのが来るから、どうぞお前さんの処の下女を夜だけ泊りに来させて下さいと頼んだ。そして内へ帰って黙っていた。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
帰て行たのは大方おおかた夜の十二時でした、いつも来れば這入がけと帰掛かえりがけとに大抵私しへ声を掛る人ですのに昨夜に限り来た時にも帰る時にも私しへ一言の挨拶をせぬから私しは変だと思て居ましたよ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
石田は毎日役所から帰掛かえりがけに、内が近くなると、雛の事を思い出すのである。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)