帆影ほかげ)” の例文
聞える物音とては、島のぐるり中から響いて来る遠くの砕け波の音と、叢林の中で鳴く無数の虫の声だけであった。人影ひとかげ一つなく、海上には帆影ほかげ一つない。
河畔かはんの木陰にテントを張ってはるかに浜辺をみわたせば、水波びょうびょうとして天に接し、眼界の及ぶかぎり一片の帆影ほかげも見えぬ、遠い波は青螺せいらのごとくおだやかに
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それでおき見渡みわたしても、一つの帆影ほかげも、また一条ひとすじけむりあとることがなかったのです。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おきを見る)あゝ、あの船を見るとわしは変にさびしくなる。初めてあの帆影ほかげを見た時暗いかげがわしの心をおおうてきた。あの船には何かわしを不幸にするものが乗っているような気がする。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
早晩そうばん、きっとぼくらは帆影ほかげを沖に発見することができると信ずる
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)