ろじ)” の例文
そこはろじの角になっていて、巷の方にも入口があるので、裏通路どおりからその巷を入って来た者は、その巷の方の入口から入るのであった。
文妖伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
入って来たろじ工合ぐあいから平坦な土地のように感じていたその感じを裏切られてしまった。そこにはたらたらと降りて往く坂路さかみちのような路があった。
萌黄色の茎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ちっとも存じません、私を追いかけて来るようでしたから、変なろじを抜けて逃げてまいりましたわ、何かありまして」
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それは己の経験に於いても判ることで、己にしてもそれに似たことは数多たくさんある、とにかく、神保町のろじの中の家へ往って、聞いてみようと思いだした。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
私はくしのことも神保町のろじの中の家のことも忘れてしまったように、また彼の女の住居すまいを知ろうと思いだした。私の心には、初めのような興味が湧いて来た。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二人は鳶口をりながら追っかけた。そして、数町すうちょう往ったところで、その火の玉はあるろじへ折れて、その突きあたりの家の櫺子れんじ窓からふわふわと入ってしまった。
遁げて往く人魂 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
天風はその微暗い街を往って、手前が二階建の貸事務所になり、さきが印刷屋になった間のろじの口へ往った。巷の奥には二つばかりの軒燈が暗い中にかすかな明りを見せていた。
文妖伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
野本天風はろじの口に気絶しているところを巡廻中の巡査に介抱せられて、その夜の明け方じぶんの家へ送ってもらったが、それから腎臓に故障が起って今に寝ているのであった。
文妖伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして、ろじの曲り角を曲る時、やはり会社の帰りに、昼往って聞く方がうしろめたくないと思った。私は気がいてそこの軒燈に眼をつけた。それは次に来る時の目標であった。
妖影 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
このさきの赤いポストの処を入って、突きあたってから、左へ曲ってくと、寺がありますね、その寺について右に曲ってくと、もう寺の塀が無くなろうとする処に、右に入って往くろじがあるがね
萌黄色の茎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
広巳はそこのろじへ隠れて往った。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)