尾行びこう)” の例文
あたりはまっ暗ですし、そのやみの中を、ちっぽけな黒んぼうが尾行びこうして来るのですから、なかなかみつかるものではありません。
おれは二十面相だ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
帯びているので、今夜も尾行びこうして来たのですが……。このあいだ江波さんの窓から蛇を投込んだのは、どうもあの男の仕業らしいのです……。
深見夫人の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
男は、この首領の後をつけてやろうと思い、十五、六間も後から、気取られないように、そっと尾行びこうした。すると、朱雀を南の方へと、四条通まで行った。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「それでも」と野枝さんは微笑ほほえみつつ、「尾行びこうが申しましたよ。児供が出来てから大変温和おとなしくなったと。」
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「どうも、また、僕の身辺が危険になって来たようだ。誰かに尾行びこうされているような気もするから、君、ちょっと、家のまわりを探ってみて来てくれないか。」
花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あの日、左膳のもとから壺を運んで来たチョビ安を、ここまで尾行びこうして来た者があったと見えて——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
主人と多々良君が上野公園でどんな真似をして、芋坂で団子を幾皿食ったかその辺の逸事は探偵の必要もなし、また尾行びこうする勇気もないからずっと略してそのあいだ休養せんければならん。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「国籍不明ノ快速飛行機ガ本機ヨリ一キロ後方ニ尾行びこうシテ来ル」
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つけてみよう。お化けなんているはずがないよ。きっと、あやしいやつだ。さあ、尾行びこうしよう。あいてに気づかれぬように、尾行するんだ。
サーカスの怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして、魚心堂が尾行びこうしている。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「あたし、もう持ちこらえられないかも知れない。ズーッと尾行びこうされて来たの。のぞいてごらんなさい。まだ門の前にウロウロしてるでしょう」
月と手袋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この子供たちは、どうしたわけか、ヘビのように、かれ草の中をはって、明智と小林のあとを尾行びこうしはじめたのです。
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ははん。あいつ、はずかしがっているんだな。わざと、知らん顔をして、にげだしたんだな。よしっ、そんならこっちは、どこまでも尾行びこうしてやるぞ。」
超人ニコラ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今さら尾行びこうをよすのはざんねんですから、両手をにぎりしめ、下腹にグッと力を入れて、同じいけがきのやぶれから、暗やみの寺内じないへとしのびこみました。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人のあとを尾行びこうするなんて、お手のものです。おとなが尾行すればすぐ気づかれますが、十二三歳のチンピラがついて来たって、だれも気にしないからです。
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
見ると、村上の五メートルほどあとから、小さな人かげが、ソッと尾行びこうしているではありませんか。それは、さっきの自動車運転助手の、かわいらしい少年です。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ふたりは、背をかがめ、のき下をつたうようにして、ふしぎな紳士のあとを、尾行びこうしはじめました。
透明怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「なにか、わけがあるのかもしれないよ。ねえ、あいつを、尾行びこうしてみようじゃないか」
怪人と少年探偵 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「うん、きみと石川君とで、尾行びこうしてごらん。ぼくたちも、あとからついて行くから。」
虎の牙 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
君の方では気がつかなんだけれど、私は君に出逢った場所から君を尾行びこうして、君の邸を知ることが出来た。小山田という今の君の姓も分った。君はまさか平田一郎を忘れはしないだろう。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「だから、ぼく、あやしいとおもったんだよ。尾行びこうしてみようか。」
探偵少年 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
小林君は、そのあやしい男のあとを、ソッと尾行びこうしました。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)