小手招こてまね)” の例文
心に悲しいおもいがあって、柳の根株ねっこに腰かけてつくづくと眺めて居ると、お光の眼には山が段々近うなって、微笑んで小手招こてまねぎするように思われる。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
半七は小手招こてまねぎをして娘を呼び出した。お杉は少しく躊躇しているらしかったが、とうとう思い切って外へ出て来た。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
五十五六、すっかり禿げ上がった番頭の伊助は、平次に小手招こてまねかれるまま、路地の奥へ入って来ました。
そこで屋形の船のひとつを私は小手招こてまねく、そこここの薄墨うすずみの、また朱のこもった上の空の、霧はいよいよ薄れて、この時、雲のきれ間から、怪しい黄色おうじきの光線が放射し出した。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
編笠も取らず、用事をも言わず、小手招こてまねきするので、巡礼の老爺は怖る怖る
お葉はその姿を見ると共に、有合ありあう小石を拾って投げ付けると、つぶては飛んで市郎のたもとに触れた。振返ふりかえると門前にはお葉が立っている、加之しかえみを含んで小手招こてまねぎをしている。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
笹野新三郎は自分も膝行いざり寄って、平次を小手招こてまねぎました。
上から小手招こてまねぎをすると、小作りの中間一人があとからつづいて登って来たので、その中間に教えられて、かれは死骸の横たわっていた場所は勿論、高い大屋根のうえをひと巡り見まわって降りた。
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
平次は八五郎を小手招こてまねぎ乍ら、靜かにその後をつけました。