小函こばこ)” の例文
それを箱根細工の小函こばこに入れて、木山に気づかれないやうに神棚に上げて置いたものだつたが、もう好い頃だと思つたので
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「糸ちゃん、望みが叶うと、よ、もやいの石鹸しゃぼんなんか使わせやしない。お京さんの肌の香がぷんとする、女持の小函こばこをわざと持たせてあげるよ。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
食卓の白布が取除けられると、牛原氏は立上って別室に退いたが、間もなく、天鵞絨張りの小函こばこを持って帰って来た。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
アレキサンダーが遠征にあたって宝の小函こばこの中に入れて『イリアス』をたずさえたのは故あるかなである。書かれた言葉は遺品のうちで最もたっといものである。
お金もそれと同じ役に立ち得る物も何も持つては行かなかつたことを確めたとき、私はどんな氣持がしたらう! 私のあげた眞珠の頸飾くびかざりは手もつかないで小函こばこに入つてゐた。
そして子供の時分から話にだけは聞いていたチュウギなるものが、目前の事実としてちゃんと鼻のさきの小函こばこに入れてあった。これは教育博物館あたりに保存してほしい資料である。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
僕はふと思ひだした、小脇のポートフォリオの中から、ゆふべ友人の細君が「道中で召上れ」といつてれたハルビンのチョコレートの小函こばこを出し、ふたを払つてうやうやしく夫人にすすめた。
夜の鳥 (新字旧仮名) / 神西清(著)
それは安楽椅子あんらくいすの上に放りだされてあった紙装かみそう小函こばこだった。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
枕元の小卓の上に、美しい寄木細工よせきざいく小函こばこが置いてあった。彼は何気なく、それを手に取って訊ねた。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
岩瀬氏は懐中から、銀製の小函こばこを取り出して、思い切ったように、夫人の前につきつけた。
黒蜥蜴 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すず小函こばこ
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)