尋常科じんじょうか)” の例文
大きいたもと袖口そでぐち荒掴あらづかみにして尋常科じんじょうかの女生徒の運針の稽古けいこのようなことをしながら考えめぐらしていたらしいが、次にこれだけ言った。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
己には始めから、選択と云う事が許されて居なかった。己は小学校の尋常科じんじょうかを卒業すると、間もなく父親の命令に依って奉公にやられた。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
熱心だったので一年もすると、巳之助は尋常科じんじょうかを卒業した村人の誰にも負けないくらい読めるようになった。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
わたしは尋常科じんじょうかの四年を卒業そつぎょうするまで、北海道ほっかいどうにおりました。そのころは、尋常科は四年までしかありませんでしたから、わたしは北海道で尋常小学を卒業したわけです。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
いわしこい、鰯こいは、威勢の好い小児こどもが呼ぶ。何でも商いをして帰って、佃島の小さな長屋の台所へ、ざる天秤棒てんびんぼうほうり込むと、おまんま掻込かっこんで尋常科じんじょうかへ行こうというのだ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)