寡欲かよく)” の例文
その寡欲かよくと、正直と、おまけに客を愛するかみさんの侠気きょうきとから、半蔵のような旅の者でもこの家を離れる気にならない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
人間は寡欲かよく恬淡てんたんで、時には途方もない物堅い人間が生存していたに違いない、随分苦しい生活であったが、猫ののみを捕えても暮しが立ち、耳の穴を掃除しても三度の飯にありついたのである。
銭形平次打明け話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
近頃、口腹こうふく寡欲かよくになったため、以前の様に濫費らんぴしません。
生来の寡欲かよくと商法の手違いとから、この多吉が古い暖簾のれんたたまねばならなくなった時、かみさんはまた、草鞋わらじばき尻端折しりはしょりになって「おすみ団子だんご」というものを売り出したこともあり
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)