寝衣しんい)” の例文
旧字:寢衣
いつか使に来た何如璋かじょしょうと云う支那人は、横浜の宿屋へ泊って日本人の夜着を見た時に、「これいにしえ寝衣しんいなるもの、此邦このくに夏周かしゅう遺制いせいあるなり。」
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
埋火うづみびをかき起して炉辺ろへん再びにぎはしく、少婦は我と車夫との為に新飯をかしぎ、老婆は寝衣しんいのまゝに我が傍にありて、一枚の渋団扇しぶうちはに清風をあほりつゝ、我が七年の浮沈を問へり。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
海野はみづから手をろして、李花が寝衣しんいはかますそをびりりとばかりつんざけり。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
是は正弘が平素紋附の寝衣しんいを用ゐてゐたので、重臣某の曾て正弘より賜つた継上下つぎかみしもを捧げたのを著て、迅速に支度を整ふることを得たからである。正弘は用邸より丸山邸内の誠之館に遷つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
李花は病床にあれりしなる、同じ我家の内ながら、渠は深窓に養はれて、浮世の風は知らざる身の、しかくこの室に出でたるも恐らくその日が最初はじめてならむ、長きやまいおもかげやつれて、寝衣しんいの姿なよなよしく
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
李花は病床にあれりしなる、同じ我家の内ながら、渠は深窓に養われて、浮世の風は知らざる身の、しかくこの室に出でたるも恐らくその日が最初はじめてならむ、長き病におもかげやつれて、寝衣しんいの姿なよなよしく
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)