室咲むろざき)” の例文
一方の窓によせて室咲むろざきの草花のはちが置いてあったが、それは病人を慰めるために節子が買って持って来たものと知れた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は、月輪禅閤つきのわぜんこうの奥に仕える万野までのと申すものでございますが、御門跡様へお目にかけたいとて、室咲むろざきの牡丹を一枝、お姫様ひいさまの思し召で持参いたしました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
室咲むろざきの西洋ばなや春寒し
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「そうか。高架鉄道があるのだネ。そりゃ一番乗って見よう。君この油画はどうだ非常にまずいじゃないかこんな書き方ってないものだ。へーこれは牡丹の花だ。これがいわゆる室咲むろざきだな。この頃は役者が西洋へ留学して、農学士が植木屋になるのだからネ。」
初夢 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
白磁はくじの壺に、牡丹ぼたんは、青春の唇を割りかけている、先ごろ、月輪つきのわの姫から贈られた室咲むろざきのそれである。悩ましい蠱惑こわく微笑はほえみをこの花はあしたに夕べに、夜半よわの枕へも、投げかけていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)